不動産のチラシやネットの物件情報を見ると、「契約不適合責任免責(けいやく・ふてきごうせきにん・めんせき)」という言葉が書かれていることがあります。
これは売主にとってとても大事な特約で、マンションを売った後のトラブルから売主を守ってくれる大切なものです。
この記事では、「契約不適合責任免責」とは何か、そして中古マンションを売るときにこの契約不適合責任の特約をつけるとどんな良いことがあるのかをわかりやすく説明します。
1. はじめに
中古マンションを売るとき、一番心配なのは売った後に問題が見つかることです。
例えば、「エアコンが動かない」「電気がつかない」「ガスコンロが設備が壊れている」などの問題を引渡し後に買主が見つけて、「直してください」や「お金を返してください」と言われるかもしれません。
そんな予想外の出費や面倒な問題から売主を守ってくれるのが「契約不適合責任免責」という特約です。
この特約があれば、マンションを売った後に思わぬトラブルや追加の出費に悩まされる心配がなくなります。契約不適合責任免責の特徴をしっかり理解して、上手に活用しましょう。
2. そもそも契約不適合責任とは
① 契約不適合とは目的が達成できない状態のこと
「契約不適合」とは、契約した目的が達成できない状態のことです。
例えば、買主が自分が住むために家を購入したのに、給湯器が壊れていて住めないような場合です。このように、買主が望む目的が達成できない状態を契約不適合と呼びます。
小さな問題でも、買主の感じ方・考え方によっては契約不適合と判断されることがあり、売主にとっては予測しにくいリスクになります。
② マンション売却での契約不適合責任の基本
売主が買主の目的を達成するために責任を持つことを「契約不適合責任」と呼びます。ここでいう、買主が目的を達成するとは『安全に住むこと』を指します。
マンション売却での契約不適合には、主に次の4つのタイプがあります。
- 物理的な問題:上階からの水漏れやガスコンロが壊れているなど住設備の故障、物理的な問題で「安心して住む」という目的が達成できない状態
- 心理的な問題:マンション内で殺人事件や自殺があった場合など、物理的には住むことに問題がなくても、心理的に住みにくい状態(普通の自然死や病死は当てはまりません)
- 法律的な問題:建築基準法などの法律や条例の制限で、契約の目的を達成できない状況
- 環境の問題:ゴミ処理場・反社会的勢力の事務所など近くに嫌な施設があって、安心・安全に生活できないなど、環境に問題がある場合
これらは、売主が気づいていない問題でも責任を問われる可能性があるため、売った後の大きなリスクになります。
3. 契約不適合責任で売主が負う対応
契約不適合責任が発生すると、売主は以下の4種類の責任を負うことになります。
これらはいずれも売主にとって大きな負担やリスクになります。
① 修理を求められる(追完請求)
契約不適合責任ありで売却・引渡し後に、買主が一番取る行動が、修理の要求です。
契約不適合責任あり、によって買主は売主に対して不具合の修理や改善を求めることができます。
例えば、床暖房に不具合が見つかった場合、売主は自分のお金で修理しなければなりません。
これには数十万円、時には百万円以上のお金がかかることもあります。
また、給排水管の不具合・上階からの水漏れの形跡など、予想外の深刻な問題が見つかった場合、その修理費用は売主の大きな負担になります。
② お金での賠償を求められる(損害賠償請求)
買主はマンションを購入したのに目的を達成できない場合、費用負担だけでなく精神的な苦痛に対する賠償までも求められます。
例えば、マンションを買って引越しや学校の手続き、電気やガスの契約変更などをした後に問題が見つかった場合、買主は引っ越し費用や仮の住まいの費用、さらには精神的な苦痛に対する賠償を求めることができます。
これらの賠償金額は事前に予測することが難しく、高額になるリスクがあります。
③ 契約をなかったことにされる(契約の解除)
契約不適合の具合が深刻な場合、買主は契約自体をなかったことにする権利があります。
この契約解除権を使われると、売主は受け取ったお金を返す必要があり、契約自体がなかったことになります。
契約を解除された売主は、マンションを再び売り出さなければならず、再度の売却活動や広告費用、仲介手数料などの追加費用がかかることになります。
また、一度契約不適合責任が原因で解除されたという事実が残ると、次の売却がさらに難しくなる可能性もあります。
④ 値段を下げるよう求められる(代金減額請求)
問題のあるマンションの価値は下がります。
買主は問題が見つかった場合、その分の値段を下げるよう求める権利があります。
例えば、給湯器の故障が見つかった場合、修理費用相当額や価値の下落分を売却金額から減らすよう求められることがあります。これにより、売主は予定していた売却金額を受け取れなくなるリスクがあります。
4. 契約不適合責任免責のメリット
契約不適合責任を免責にするということは、売主の責任をすべてなくすことです。
これにより、売主には以下のような大きなメリットが生まれます。
① 売主の売却リスクを大幅に減らせる
契約不適合責任免責の特約をつけることで、物件を引渡した後に問題が見つかっても、修理費用や賠償金を払う必要がなくなります。これにより、売却後に予想外の高額な出費が発生するリスクから解放されます。
特に、古いマンションや、売却直前まで家族が住んでいたなど自分でも把握しきれない問題が隠れている可能性がある場合は、この特約の価値が非常に高くなります。
実際に売却後2か月経ってから「浴室のシャワーヘッドに不具合がある」と連絡があり、数万円の修理費用を請求されたケースもあります。
② 確実に売却を終えて次の生活計画が立てられる
契約不適合責任免責特約があると、売却完了後は新たな責任を負うことなく、次の生活に集中できるという大きなメリットがあります。
住み替えや投資のためにお金の計画を立てている場合、売却後に予想外の出費があると計画全体が狂ってしまう可能性があります。契約不適合責任免責特約は、そうした不安を取り除き、安定して次の計画を立てるための保険となります。
③ 心理的な安心感が得られる
売却後に「もし何か問題が見つかったらどうしよう」という心配から解放され、精神的な負担を大きく減らせるのも大きなメリットです。
特に遠方への転勤・海外へ引越しを予定している場合、売却後に問題が発生すると対応が非常に難しくなります。契約不適合責任免責特約があれば、そうした不安を抱えることなく新生活をスタートできます。
④ 法的トラブルのリスクを避けられる
契約不適合責任をめぐるトラブルは、時に長引き、裁判になるケースもあります。免責特約をつけることで、そうした法的トラブルに巻き込まれるリスクを大幅に減らすことができます。
法的トラブルには弁護士費用や裁判費用、時間的コストなど多くの負担が伴います。免責特約は、そうした予想外のトラブルからあなたを守る強力な盾となるのです。
5. ネットに書かれている、契約不適合責任免責で売却のウソ・ホント
契約不適合責任免責は売主にとって多くのメリットがありますが、いくつかの注意点があります。ここでは、それぞれの注意点と効果的な対策について説明します。
① 売却価格が安くなる?
売主のリスクを下げる契約不適合責任免責は、そのリスクを買う人が負担することになるため、一般的に契約不適合責任免責のマンションは同じ条件のマンションと比べて数%程度価格が下がると言われています。
対策:適正な価格設定の工夫
価格が下がるデメリットを最小限に抑えるために、以下の対策が効果的です:
- 物件の魅力をアピール:立地の良さや日当たり、設備の新しさなど、物件の良い点を前面に出す販売戦略を立てる
- 修理の履歴や管理状況の詳しい資料を準備し、物件の状態が良好であることを示す
- 周辺相場を詳しく調査し、契約不適合責任免責を考慮した上でも最適な価格を設定する
これらの対策により、価格の下落幅を1割〜1.5割程度に抑えられる可能性があります。特に物件の状態が良好であることを示す客観的な資料があれば、買う人の不安を減らし、価格交渉を有利に進められます。
対策:物件の状態を正確に伝えるための資料作成
買う人の不安を減らすための具体的な方法として、以下のような資料を用意すると効果的です:
- マンションの修理の履歴を時系列でまとめた資料
- 過去の大規模修理の内容と費用の詳細
- 管理組合の活動状況や修繕積立金の状況
- 設備の使用年数や状態を記録した資料
これらの資料を用意することで、買う人は物件の状態をより正確に把握でき、不安感が減ります。結果として、価格下落を最小限に抑えることができます。
② 買主の購入意欲が高まらない?
契約不適合責任免責のマンションは引き渡し後の費用負担が不明確なため、買う人からの問い合わせが少なく、販売が長引く傾向があると言われています。
対策:物件の透明性を高める方法
買う人の不安を取り除くための具体的な方法として、以下のやり方が効果的です:
- 売主自身が把握している物件の状態を詳しく開示する姿勢を示す
- リフォームの履歴や日常的な手入れの状況を具体的に説明
- マンション全体の管理状況や修理計画を提示
- 売主が実際に住んでいた時の体験談(日当たりや風通し、生活のしやすさなど)を共有
このように物件の情報を透明に開示することで、買う人の信頼を得られ、契約不適合責任免責があっても購入を検討してもらいやすくなります。
6. 契約不適合責任免責で中古マンションを売るときの注意点
① 意図的に隠したことは免責にならない
重要な注意点として、意図的に買う人に伝えなかったことについては契約不適合責任免責が適用されないことがあります。例えば、自殺や事故があったことを隠して売却し、後に発覚した場合、免責特約があっても賠償を求められる可能性があります。
対策:物件状況確認書と付帯設備表の適切な活用
リスクを避けるために、以下の点に注意して書類を作成しましょう:
- 物件状況確認書には、知っている物件の状態をすべて正直に記入する
- 特に、水漏れの履歴、設備の故障や修理の履歴、事故や事件の有無などは必ず正直に記入する
- 付帯設備表には、各設備の状態を正確に記入し、問題があれば具体的に説明する
これらの書類に正確に記入することは、単なるリスク回避だけでなく、元付仲介会社・客付仲介会社・買主との信頼関係構築にもつながります。
対策:適切な説明による信頼関係の構築
買主に対して正直に物件の状態を伝えることは、以下のような効果があります:
- トラブル防止:事前に正直に伝えておくことで、引き渡し後のトラブルを防げる
- 価格交渉のスムーズ化:問題について事前に説明することで、適正な価格での合意が得やすくなる
- 売買の迅速化:透明性を高めることで、契約から引き渡しまでの流れがスムーズになる
知っている情報をすべて正直に開示する姿勢は、不動産仲介会社はもとより買主との安心感につながり、契約不適合責任免責があっても取引が成立しやすくなる重要な要素です。
② ホームインスペクションによる弊害
対策:ホームインスペクション(住宅診断)の活用
ホームインスペクションは、専門家が客観的に物件の状態を調べるサービスです。これにより、以下のようなメリットが得られます:
- 第三者の専門家による客観的な評価が得られるため、買う人の信頼性が高まる
- 問題の有無や程度が事前に把握できるため、買う人の不安を減らせる
- 証明書が発行されるため、物件の価値を裏付ける資料として活用できる
マンションの場合、ホームインスペクションの費用は4.5〜6.5万円程度ですが、この投資により販売期間の短縮や値引き交渉の抑制につながる可能性が高く、十分に元が取れる投資と言えます。
③ 築浅マンションでは契約不適合責任免責しないほうがいい?
新しいマンションの所有者は「うちは築年数が浅いから契約不適合責任免責は必要ない」と考えがちですが、実は築年数に関わらず免責特約を検討する価値があります。
1)将来のトラブル防止
築年数が浅くても予想外の問題が発生するリスクは常にあります。例えば、
- 建物の構造上の問題が引渡し後に見つかるケース
- 建築時の不備が数年経ってから表面化するケース
- 設備の初期不良や製造上の欠陥が使用とともに明らかになるケース
特に最近の住宅は高度な設備や複雑な構造を持つものが増えており、専門知識がなければ気づけない問題も少なくありません。
契約不適合責任免責特約は、こうした予測困難なリスクから売主を守る安全網となります。
2)予想外の瑕疵発見のリスク回避
新築時には気づかなかった建築・施工時の問題が後から発覚することはゼロではありません。例えば、
- 壁や床下の配管の問題
- 断熱材や防水処理の施工不良
- 建材の品質問題
こうした問題は通常の住居使用では気づかないことも多く、買主が入居後の生活で発見するケースもあります。
契約不適合責任免責特約により、こうした「知らなかった問題」による追加費用やトラブルのリスクを避けることができます。
3)売却後の安心感
マンション売却後に新しい生活を始める際、過去の住まいについての心配事から完全に解放されることはとても重要です。契約不適合責任免責特約により、売却完了が本当の意味での「終わり」となり、次の人生のステージに安心して進めるようになります。
特に以下のような場合は、新しいマンションでも免責特約の価値が高まります:
- 遠くや海外への引っ越しを予定している場合
- 忙しい仕事をしていて対応の時間がとれない場合
- 次の住居購入のためにお金の計画を確定させたい場合
7. 契約不適合責任免責特約をつけて売る仲介で売却しよう
① 売る仲介でマンションを売却するメリット
契約不適合責任免責特約をつけてマンションを売却する場合、マンション売却専門の売る仲介に依頼することで効果を最大化できます。
1)売主の立場に立った提案が可能
売主の100%味方である売る仲介は買主側の利益を考慮する必要がないため、100%売主の利益を優先した提案が可能です。これにより、
- 契約不適合責任免責特約を積極的に取り入れた売却戦略を立てられる
- 売主のリスクを最小限に抑えるアドバイスを受けられる
- 売主にとって最も有利な条件での交渉をサポートしてもらえる
当社の過去のデータでは、契約不適合責任免責特約をつけた上でも通常より高い売却価格を実現したケースもたくさんあります。
2)契約不適合責任免責での売却交渉に強み
売る仲介は、契約不適合責任免責でのマンション売却の実績がたくさんあるため、
- 買主に対して契約不適合責任免責の特約を適切に盛り込んだ書類を作成できる
- 特約があっても買主が安心して購入できる環境を整えるノウハウがある
- 買主の疑問や不安に的確に対応できる
これにより、契約不適合責任免責の特約があっても内覧会により購入希望者を多く集められ、より良い条件での売却が可能になります。
3)売主の利益を最優先したアドバイスが受けられる
売る仲介では、以下のような売主に有利なアドバイスを受けられます。
- 契約不適合責任免責の特約の内容を売主に最も有利な形で設定する方法
- 契約不適合責任免責の特約があっても物件の魅力を最大限アピールする販売戦略
- 契約不適合責任免責の特約による価格下落を最小限に抑える売却方法
こうしたアドバイスにより、リスクを最小化しながら最大の売却益を得られる可能性が高まります。
② 両手仲介の一般的な不動産会社との違い
1)両手仲介では契約不適合責任免責特約をつけての売却が難しい
両手仲介(一つの不動産会社が売主と買う人の両方の仲介を行うこと)の場合、中立的な立場を維持する必要があるため、売主に有利な契約不適合責任免責特約を積極的に提案しにくい状況があります。
具体的には:
- 買主への配慮から契約不適合責任免責の特約を契約に盛り込むことに消極的
- 契約不適合責任免責の特約の内容を売主に最も有利な形で設定することが難しい
- 買主からの反対意見があると契約不適合責任免責特約の導入を諦めてしまうことも
このような状況では、売主のリスク回避という重要な目的が達成されにくくなります。
2)買主側への配慮から生じる制約と売主側のリスク
両手仲介の場合、買主に対しても責任を負っているため、
- 買主のリスクを増大させる契約不適合責任免責の特約については導入自体消極的になりがち
- 契約の内容が買主寄りに調整されることもある
- 売主の本来の意向が100%反映されない契約内容になる場合もある
結果として、売主は契約不適合責任を全面的、もしくは部分的に引渡し後数か月間負い続ける状態になることがあります。
これは、売却後も潜在的なリスクを抱え続けることを意味し、安心して次の生活に移行できない原因となります。
8. まとめ
契約不適合責任免責特約をつけて中古マンションを売却することは、売主にとって多くのメリットをもたらす選択だと考えています。
最大のメリットは、売却後の予想外のトラブルや費用負担のリスクから解放されることで、安心して次の生活をスタートできる点にあります。
特約をつける際の注意点として価格が安くなる可能性や買う人の購入意欲が高まらない可能性もゼロではないですが、物件の状態を正確に伝える資料作成など、効果的な対策を講じることでこれらのデメリットを最小限に抑えることができます。
また、築年数の浅いマンションでも、将来のトラブル防止や予想外の瑕疵発見のリスク回避のために契約不適合責任免責特約を検討する価値は大いにあります。売却完了後の真の安心感を得るためにも、この特約の活用を前向きに検討すべきでしょう。
契約不適合責任免責特約をつけてマンションを売却する際は、売却専門の不動産会社に依頼することで、売主の立場に立った提案や契約不適合責任免責での売却交渉に強みを持つサポートを受けられる大きなメリットがあります。
一方、両手仲介の不動産会社では、買う人側への配慮から契約不適合責任免責の交渉が難しくなり、売主のリスク回避という目的が十分に達成されない可能性があります。
マンション売却の際には、自身の安全と利益を最大化するために、契約不適合責任免責特約の活用と適切な不動産会社選びを検討しましょう。これにより、トラブルのない売却と安心できる次のステージへの移行が実現できるはずです。